プロダクションノート

“記憶探偵”が生まれるまで

探偵が他人の記憶に入り込み、真実を突き止めることができるとしたら……? 『記憶探偵と鍵のかかった少女』は、そんなシンプルな発想が基になっている。
『[リミット]』(10)、『死霊館』(13)など数多くの作品を手がけているプロデューサー、ピーター・サフランは、脚本家のガイ・ホームズとともに記憶をテーマにしたミステリーの企画・開発に着手した。サフランは、いくつかの短編映画でゴヤ賞にノミネートされていたマドリード出身の若手監督ホルヘ・ドラドを監督に起用することを思いついた。
ドラドはホームズと共に脚本作りに取り組んだ。ドラドは、2010年度シッチェス・カタロニア国際映画祭の場で、審査員を務めていたジャウマ・コレット=セラに脚本を直接手渡した。その瞬間からセラはこのプロジェクトへの参加を表明した。
セラはこう語る。「長年ハリウッドで自分の監督作品を手がけてきたが、スペインに帰国する度に才能豊かな監督たちがどれほど多くいるかに気付かされた。私は、製作会社オンブラ・フィルムズを立ち上げ、彼らがハリウッドで活躍するための道を提供し始めた。ホルヘとの仕事は素晴らしいものとなった。彼はTVCMを手掛けた経験や短編映画での受賞歴もあり、 映画に対して卓越したセンスをもっている。視覚スタイルも抜群で、また人間の本質を捉える鋭い感性も併せ持っている。これらすべての要素が『記憶探偵と鍵のかかった少女』の映画化へと導いてくれた」
本作は、誰も見たことのない世界を探究する、心躍るミステリーだ。作品の中で我々は記憶にアクセスし、どのように物事を記憶しているのかをまったく新しい視覚方法で探究することができる。観客はジョンとともに他人の記憶に潜入し、そこで繰り広げられる出来事を目撃する。あるいは、才気あふれる少女アナの苦悩に共感するだろう。彼女は物語の中心人物であり、彼女の記憶が本作に隠された謎を解明する鍵となるのだ。
また本作は、重層的なストーリーが展開するミステリーというだけでなく、人間の心理と感情の闇をも取り上げている。ドラド監督はこう語る。「この作品は、キャラクターたちの心の深奥にぴったりと寄り添うサスペンス作品でもある。心理的恐怖を大量に盛り込み、興奮と巧みなひねりに満ちている。まるで、すべての駒が動きだす大きなチェスゲームだ」

スペイン映画界の才能が集結

ドラド監督を支えるスタッフには、撮影のオスカル・ファウラ(『インポッシブル』(12))、美術のアラン・ベイネ(『ブランカニエベス』(12)でゴヤ賞受賞)、衣装のクララ・ビルバオ(『ブッチ・キャシディ ‐最後のガンマン‐』(11・未)でゴヤ賞受賞)をはじめ、スペイン映画界の気鋭の面々が揃えられた。
まず、彼らの大きな課題となったのが、十分に練り上げられた脚本、明確に定義された構成とキャラクター、そして記憶への旅という斬新なコンセプトに沿う独自の魅力的な世界を作りだすことだった。ロケ地はいくつかの候補地を検討したのち、カナダのモントリオールに決定した。「モントリオールはヨーロッパの影響を色濃く受けながら、近代的な建物と歴史的な建物が混在している。スケールの大きさ、さまざまな建築様式が集結している点も魅力的だ」と美術のベイネは言う。部屋の内部は、セットの他にバルセロナなどでも撮影されたが、ここはキャラクターの心理を表現する空間でもある。ジョンの部屋は雑然として散らかり放題、アナの部屋は清潔で単調、等々。更に視覚効果で微妙に空間を拡大したり修正したりという手を加えている。
撮影は8週間にわたり35ミリカメラでおこなわれた。「デジタル技術の進歩に目を向けるべきだが、35ミリで撮ったスクリーンショットは、質感や色彩の調整が多様化できるという点でデジタルに引けを取らない」ドラド監督は指摘する。撮影のファウラは「ホルヘと僕は、捉えがたい雰囲気を醸し出すフィルムノワールへのアプローチとして、普通とは違う光の表情を作り出し、表現主義的なトーンを出そうと話し合った。そのためにはフィルム撮影が必要不可欠だったんだ」と説明する。

複雑なキャラクターを演じきった実力派

主演のジョン役には、多才なマーク・ストロングがすぐに候補にあがった。あらゆる役を演じることができる一流の俳優だ。彼は時間をかけて役について理解を深め、自身も過去の記憶に苛まれながら記憶探偵として仕事を全うしようとする複雑なキャラクターを、見事に捉えた。アナを演じるのは、独特の透明感を持つタイッサ・ファーミガだ。女優に興味はなかったがその才能をやはり女優である姉ヴェラ・ファーミガに見出され、ヴェラ自身の監督・主演作『ハイヤー・グラウンド』(11・未)でスクリーンデビュー、その後も『ブリングリング』(13)など話題作へ出演している、期待の新人だ。今回の抜擢に、タイッサはフレッシュで伸びやかな演技で応えた。物語の要になるセバスチャン役には、実力派の俳優が求められた。偶然にも過去にマーク・ストロングと共演経験のあるブライアン・コックスに白羽の矢が立てられた。複雑な背景を持つキャラクターをそれぞれ見事に表現した主役の他にも、インディラ・ヴァルマ、ノア・テイラー、リチャード・ディレイン、サスキア・リーヴスら実力派の俳優たちが、脇を固めている。

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配給アスミック・エース アスミック・エース

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